I Would Prefer Not Toとは


あの『白鯨』で有名なメルヴィルの代表的な短編に「書記バートルビー」(1853)があります。

 NYウォール街の法律事務所に代書人として雇われた青年バートルビー。最初は有能とも思われる仕事をしていたのですが、ある時からI Would Prefer Not To~(できればやりたくないのですが・・・)と言って仕事を拒否し始めます。

 仕事を拒否するだけでなく解雇も拒否。困った事務所の所長(語り手)は居直るバートルビーを置いて、事務所自体を引っ越します。するとバートルビーの居残った建物の所有者が困り果て、最後は警察ができてバートルビーは刑務所に。

 そこでも食べる事を拒否したバートルビーは息絶えて物語は終わります。何か寓意的な、そして現代の不条理物語にも読めて、デリダドゥルーズのような哲学者の解釈を呼び込むことになります。つまりこの拒否を消極的な労働拒否ではなく、権威に対する抵抗、存在論的な解放にもつながるとか。

 1969年、1970年、1976年、2001年と4回も映画化されているのも、いろんな解釈、批評、物語を描きたくなるテクストだと思います。

 きっかけは先週のT先生の話から。NYのオランダからイギリスへの支配・文化の変遷と元々の題名Bartleby, the Scrivener: A Story of Wall Street(代書人バートルビー ウォール街の物語)とを関連付けて説明してくれました。

 実はバートルビーの話は2009年の支部大会の講演が興味深くて、一時期仲間内で I Would Prefer Not Toというのが流行りました。それでと言うか、今回のお話でもふれられていたので、ついロゴのTシャツを買ってしまいました。2000円くらい。