ハービー・ハンコックとポスㇳ・ハードバップ

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   ハービー・ハンコックというとMaiden Voyage (1965)がタイトル曲の「処女航海」の美しいハーモニーとリラックスしていながら同時に旅立つ時の期待が表現された清新な演奏が印象的でした。1963年から加入したマイルス・バンドと同様のモード的なアプローチもよく分からないなりに魅力的だった。いま考えると知的、ロジカルで静かなパワーが感じられた。

 しかし今回初期のアルバムを聞き直してみるとデビュー作のTakin’ Off (1962)と2作目のMy Point of View (1963)にはハードバップの香りがする。当然と言っていいのですが50年代後半から60年代前半はハードバップ

の時代で、以前もこのブログで2015年頃に書いて本にも収録したのですが、僕的な定義ではビーバップの熱狂と喧噪の後に、クール・ジャズまたはウェストコースト・ジャズのように若干静か目で、アレンジの効いたジャズが主流を占めました。すると今度はまたそれに飽きたらずというか揺り戻しというかビーバップに本家帰りした黒っぽい、しかしウェストコースト・ジャズの時代を経た痕跡も含めたハードバップが出現します。

 このTakin’ Off (1962)と2作目のMy Point of Viewのメンバーと演奏も、いい意味で成熟したハードバップ、そして次の段階の予兆も感じさせる演奏でした。先輩の管楽器を立てつつ、自分のピアノもきちんと主張する。ハードバップ~ポスㇳ・ハードバップ~モードへ向かうジャズの変貌をハービー・ハンコックは自分のアルバムとマイルスのアルバムで見せてくれる訳です。しかしほんのちょっと後輩のチック・コリアキース・ジャレットにマイルス・バンドのキーボードの位置を譲り渡すと、今度はジャズ・ファンクの道を切り開き音楽的・商業的には一世を風靡しますが、ジャズ・ファンはあまり評価しないような気がします。僕もファンクには興味がありますが・・・