マイルスのライブ5部作

 勝手に自分で名付けたのですが、Miles in Europe(1963、仏), My Funny Valentine(1964,2月、NY), Fore and More(1964,2月、NY), Miles in Tokyo(1964,7月), Miles in Berlin(1964,9月)の5作。

 ここではサックス奏者とマイルス・コンボの変化がポイント。最初の3作がジョージ・コールマン、東京ではサム・リバース、そして最後がウェイン・ショーターで、これで「黄金のクインテット」が完成すると言われています。僕のその常識?にのって前項で称揚しましたが、何とジョージ・コールマン、サム・リバースも悪くない。と言うかマイルスとショーターって方向性が似ていて、グループとしてまとまり過ぎてしまうようにも思えます。

 いずれにしても、「黄金のクインテット」やその後の電化マイルスになる前の、最高のマイルス・クインテットのライブ演奏がすごい。なんと言っても17才の天才少年トニ―・ウィリアムズのドラミング。その自在なリズムの上で、コードからモードへの展開が自由にできるような。そして知的で革新的なハンコックのピアノのハーモニーとシングル・トーン。スタジオでは冷静なマイルスも、ライブでは熱くなるような。

 My Funny ValentineFore and Moreとは同じNYのフィールハーモニック・ホールでのライブ。前者がスローなバラード、後者がアップ・テンポの演奏で、後者の迫力が人気のような気がします。でもMy Funny Valentineの緊張感あふれる演奏も同様に素晴らしい。なんというかスタンダードを脱構築している。面倒な言葉が好きなんですが、言い換えると解体して再構築しているので、元のスタンダードとその新しい解釈の両方を楽しむ事ができます。前々段のコードが従来の解釈で、モードというより自由度が大きい旋法?の中での演奏と言うか。でも自由度が高いと、演奏能力が問われるので、もちろんそのようなレベルは越えているという言うか。

 そして第5作でブレーキ―のジャズ・メッセンジャーズからウェイン・ショーターを引き抜いて参加させます。これがベルリン~「黄金のクインテット」と言われますが、僕は前の意見を変えると言うか、間違っていました。ショーターはマイルスと方向性が似ていて、親和性が強すぎて、グループの演奏がまとまり過ぎている(ような気がする)。その意味で、マイルスの奔放さも発揮できるショーター加入前のグループの方が好きです。