エミネムとアップダイク

 2002年のエミネム主演の『8マイル』。デトロイトにある富裕と貧困とを分ける8マイル。映画はまぁまぁだったけれど、音楽はよかった。15曲のうち、1曲目Lose Yourself、3曲目8 Mile, 8曲目8 Miles and Runnin’, 11曲目Wanksta, 14曲目That’s My N**** for Real そして16曲目Rabbit Runが好きでiphoneでよく聞いています。

 ある時、渋谷の交差点で、どこからかLose Yourselfがスピーカーの大音量で流れてきて、びっくりしました。11曲目は50 Centという有名なラッパーによるもの。彼が警官役でデニーロと共演した映画『フリーランサー』もみました。14曲目はYoung Zeeのライムでとてもかっこういい。Nで始まる伏字は「黒人」への蔑称。

 そしてRabbit Runも普通にきいてきて、さっき気が付いた。あ、アップダイクの小説のタイトルだ。ライムはwalllから脱出しようとうする若者の葛藤のように読めます。一説ではライムが書けなくなったエミネムの悩みだと。

 同じタイトルで、糸井重里作詞、細野晴臣作曲の女性歌手の曲もあるようです。

 2002年はアップダイクが70才になった頃。この自分の作品名を引用したラップを聞いたかも知れません。エミネムもウサギ(ハリー・ラングストローム)も自分の置かれた場所からの脱出を目指していたようにも。『8マイル』自体が、貧困層の白人青年がラップによって、そこから脱出する成功物語。主人公とエミネムが重なる。

 主人公はスミスという名前らしいが、ラビットとも称しています。それ自体が、アップダイクの「ラビット」を意識しているような。だからか最後の曲に「走れ、ラビット」を配置して、「8マイル」から抜け出す主人公≒エミネムと重ね合わせる。

 写真はエミネムとYoung Zee。若い時に同じグループ(Outsidas)にいたらしい。OutsidasはOutsidersの黒人英語、またはラッパー的な英語か。African-American vernacular Englishというか。間違った英語ではなく、わざと白人の正統的な英語とはちがった発音や表記をするんですね。これはある種当然な自己主張というか、黒人としての文化的な自己表現と言うか。