『三文オペラ』とジャズ

 ドイツのジャズ・ピアニスト、ヨアヒム・キューンのピアノ・トリオ、『三文オペラ』(1996年)。ベースはフランスのジャン=フランソワ・ジェニ=クラーク、ドラムもフランス、ダニエル・ユメール

 『三文オペラ』は1928年、ドイツの劇作家ブレヒト作。音楽はクルト・ワイル。楽曲の中では「マック・ザ・ナイフ」がジャズでは「モリタ―ト」のタイトルで有名です。

 『三文オペラ』はほぼ200年前のイギリスのジョン・ゲイ作『乞食のオペラ』が原作のようなものです。

 でヨアヒム・キューンは時にフリーになる時もあって、そのバランスがいいです。どの演奏もいいですが、特に6曲目のInstead-of Songが1曲の中で、かわいらしいメロディがあったり、フリーなピアノが飛翔したり、ベースとドラムのインタープレイも極上で、何度も繰り返して聞いています。

 追加的に。このブログの後も繰り返し聞いています。3曲目のMr. Peacham’sMorning Hymnもいい。やはり曲の中で変化があって、物語のように聞こえる。途中での暗いロマンティックなベース・ソロとそれにからむドラムとのデュオの部分も聞きどころです。7曲目のLove Songも。例えば曲の冒頭、メロディを引いた後、すぐにフリーなアドリブに入り、その後ベースのリズムで違う曲調に移動して、また最後にメロディに戻る。またはメロディに戻らないで、アドリブのまま終わるなど。

 ダニエル・ユメールは絵も描くと知ると、どこか色彩豊かなドラミングに聞こえてきます。

 ベースは残念ながら、このアルバムの数年後に50数歳で亡くなりました。

 このピアノ・トリオは好きで6枚くらい持っていますが、『ライブ』の2曲目「ラスト・タンゴ・イン・パリ」が好きでした。でも去年の11月の末に「ロンド」でマスターの息子さんの奥さんと話していて、1曲目のChangementが好きだと言われて聞き直すと確かにいい。聴衆の反応もいいです。セシル・テーラーのコンサートのCDでも、アドリブの切れ目のいいところで、ヨーロッパの観客の拍手や歓声が入って、臨場感が増すんですよね。

 何か楽しみつつ、真剣に聞いている。聴き所を知っている。いい演奏への理解と反応が、日本やアメリカのジャズ・ファンとは違うような気がします。

 

 でも他のライブ(ヨーロッパ)も買って聞きましたが、やっぱり『三文オペラ』がいい。ライブの聴衆の熱さがプレイに刺激を与える場合もありますが、アドリブが冗長になる場合もある。『三文オペラ』はミュージシャンのオリジナルよりも、楽曲自体がよくて、アドリブのバランス、フリーとそうでない部分のバランスもいい。聞くたびに、そして他のCDと比較して聞いた後も、このアルバムに戻って、いいなぁと聞きほれています。

  写真の3人は少しこわい?かな。