渡辺京二、ジェフ・ベック 自由に生きた

   

 

  奇をてらっているのではなく、昨日NHKのオンデマンドで見た渡辺京二の最晩年のインタビューと朝刊の追悼記事(田中優子による)が偶然だった。

 それと今日は2ヵ月ぶりの病院の待合室でアイフォンのニュースにジェフ・ベック78才の訃報が掲示された。何とかこの二人をまとめようとする(まとまらないけれど)、キーワードは「自由」か。

 渡辺京二は1930年京都生まれ、北京・大連そだち。戦後共産党入党、結核。第5高等学校、法政大学卒業。その関係もあって、前法政大学総長の田中さんの追悼文だったのかな。江戸文化の研究者でもあるし。

 僕は2007年『逝きし世の面影』(1998年出版、2005年和辻哲郎賞受賞)で、江戸末期の庶民の生活の豊かさ(物質的ではなく)を知りました。後から、外国人の文献によって日本人の良さを発見するのはどうかなとも思いました。でも日本人による日本人の豊かさを書いたものがないのだから仕方ないかな。

 いずれにしても近代文明の虚妄について、前近代の美質から逆照射する視点はするどく深い。大学卒業後は、故郷熊本での地方誌発刊と、石牟礼道子の編集者としての作業が重要だと。その後というか同時に在野の研究者として前述の他『黒船前夜』(2010年出版、2019年大佛次郎賞受賞)など多数。

 さてジェフ・ベックは1944年イングランドに生まれる。21才でクラプトン脱退後のヤードバーズに加入。この時期にアントニオーニ監督の『欲望』(1967)に出演しています。この映画はデビッド・ヘミングス演じる若き写真家がよかったです。あのジェーン・バーキンはモデル志望の女の子で手ていた。ジェフ・ベックはジミー‣ページと出演。ギターを壊す場面も。

 ベック・ボカート・アンド・アピス時代は飛ばして、ソロの時代のベック。1975年のBlow by Blowと1976年のWiredが好きです。と言うかそれしか知らない。Blow by BlowのCause We ended as Loversはスティービー・ワンダーの曲で、後述の佳曲。またWiredでのGoodbye Pork Pie Hatもチャールス・ミンガスの名曲に挑戦してほほえましいです。

 さてクラプトン肝入りのクロスロード・ギター・フェスティバルに2007年に出演したベック。Cause We Ended as Loversを女性ベースのタル・ウィンケルフェルドと共演していました。21才と63才の共演。タルの力強い演奏をベックは称えていました。ベックのタンク・トップもスリムで似合っていました。トレモロ・アームを使って、チョーキングやヴィヴラートではなく、音程を操作するのだとか。僕は好きでした。

    写真は若き日の渡辺さんと石牟礼さん。ベックとタル・ウィンケルフェルド。

 組織に所属しない自由な生き方を選んだ渡辺さん。ロックやジャズやフュージョンなど様々なスタイルを自由に駆使したベック。

 自由でカッコいい、92才と78才に合掌。