夏の音楽

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 夏にはボサノヴァやサンバのような南米のリズムがあう(ような気がする)。もっと昔はレゲエを聞いていました。最近はバーデン・パウエル黒いオルフェ~ベスト・オブ・ボサノヴァ・ギター/バーデン・パウエル』(Philips)を聞いています。その前は『孤独』(Solitude on Guitar)を聞いていました。クラシカルな技術に支えられた激しい、時の悲しいギターがいいんですね。

 高校の時に初めて買ったLPが長谷川きよしの『ひとりぽっちの詩』でした。目的は「別れのサンバ」。この曲は今でも新しいヴァージョンがyoutubeで聞けますが、さらに進化しています。

 でボサノヴァを知る前にサンバというジャンルを知り、バーデン・パウエルPoema on Guitarを買って聞きました。LPジャケットの絵を覚えています。後からアントニオ・カルロス・ジョビンとの共作でしられるヴィニシウス・ダ・モライスとも「ビリンバウ」をパウエルは作っているんですね。

 モライス(詩)/ジョビン(曲)は「イパネマの娘」、「おいしい水」、そして「想いあふれて」(Chega de Saudade、英語バージョンはNo More Blues)などボサノヴァの名作をたくさん作っています。Saudadeという言葉は郷愁・憧憬・思慕など意味するポルトガル語スペイン語で、僕は自分のブログのタイトルの「郷愁」はここから来ています。映画や音楽、そして小説にもこのサウダージという言葉がタイトルに使われているのは意味と響きに魅かれるものがあるからだと思います。

 さてサンバの起源につていは諸説ありますが、アフリカから来た黒人の音楽も入っていて、アフロ/ブラジル的な部分と、ヨーロッパの舞曲にラテン・アメリカのリズムが混交した音楽だと思います。それが1960年代の年の中産階級の若者がアメリカ音楽の影響もうけて作り出したのがボサノヴァ。サンバよりシンプルで洗練された音楽で、サンバの土俗的な宗教的なエネルギーは薄まり、ミニマルで都会のお洒落な場にふさわしい音楽に変貌していきます。

 しかもジョアン・ジエルベルトがアメリカのサックス奏者スタン・ゲッツと共演すると世界的なヒットになったのは周知の事で、僕もブログ本に書きました。ジャズ的にはビバップのエネルギッシュなスタイルがクール・ジャズに沈静化しいったのと、サンバがボサノヴァにかわっていったのとよく似ていて、その似た者同士が共同してジャズとボサノヴァをブラジルとアメリカだけではなく世界に広まったのは面白いと思いました。

 これも最近書きましたがスタン・ゲッツのテナーよりもアルトのバド・シャンクの方がボノヴァの囁くような音楽と親和性が強いような気がします。アルトは人間の声のピッチと近いと言われていますし。またブラジルのギタリストのローランド・アルメイダとシャンクとの共演も1950年代からあって、それが70年代のLAカルテットになったのもジャズとボサノヴァの音楽的混交/共生として評価できると思います。

 写真はアフリカ人の血を引くと思われるギタリストと伝説の才人モライス。アルバム・タイトルにアフロ・サンバとあるのもジャンルの出自が想像できます。