ジャズの100年とジャンルの消滅

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  ヤン・ガルバレクRites(2006)を聞いて和んでいます。でも聞きながらこれってジャズなのだろうか?と思いながら聞いています。1960年代初めに北欧の14才の少年がコルトレーンを聞いて、1970年代初めからジャズのレコードを出しますが、それは黒人の、そしてニューヨークやアメリカのジャズとは若干テイストが違うヨーロッパの北欧のジャズだった訳で。

 ジャズがモードの1960年代からフュージョン/クロスオーバーの1970年代をへて、1990年代はじめにはマイルスがいなくなり、1961年生まれのウィントン・マルサリスが1985年に『ブラック・コーズ』でグラミー賞を取り若きトランぺッターがジャズが黒人が生み出した文化であるという遅れてきたafrocentrism(アフリカ≒黒人中主義)を主張しだした頃からジャズの一時代は終わったのかなと感じはじめたような気がします。ジャズ・ジャーナリズム(そんなものがあるとして)が「新伝承主義」というへんなジャンル名を考えたのも、ジャズ(モダン・ジャズ)の伝統を引き継ぐ若き(黒人)ミュージシャンたちを持ち上げて、ジャズというジャンルの延命を図ったのかな。

 1969年生まれのロイ・ハーグローブは1990年代にレコードを発表しはじめジャズとヒップホップの両方でグラミー賞を取っているので、この世代のアメリカの黒人の若者はまずヒップホップを聞き始めて、その中でより音楽のテイストが高い?人はジャズにも向かう。またはジャズを中心にしつつ、ヒップホップやR&Bなどを自然に取り入れる。

 そう言えば、コルトレーンだってR&Bのバンドで演奏した事もあるので、その辺の黒人音楽のジャンル横断って普通だった部分もあり。じゃ、自分の音楽的文化的ルーツを基盤として他のジャンルを取り入れるのが普通だったのかも知れません。ミュージシャンのエゴか、お金のためか、いろんな音楽をやってみたいという気持ちか。

ノルウェーのジャズ・ミュージシャンが北欧のメロディや、エスニックなサウンドをジャズと同等の自分の音楽の重要な要素として取り入れるのはぜんぜん不自然ではない。聞き手がジャズを思って聞いていると、そうではない曲や部分もあって戸惑うだけかな。とすればジャズ、特にモダン・ジャズというある意味でかっちりしたジャンルは20世紀後半の50年間に存在したと最後通牒を付けても構わないか。

 あと受容と言うかオーディエンスの問題があるような気がする。ミュージシャンの音楽に対する気持ちや、創造と生活とかいろいろとあると思うけど、ジャズ・ファンはジャズを中心に聞く人が多いと思います。僕もいろんなブラック・ミュージックやロックも聞くけれど、メインはジャズ。そんなリスナーも僕ら70代前後を中心に消えて?行くし。