ボサノバのミューズ

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  もちろんブラジルの女性歌手ナラ・レオンの事です。1942年生まれで1964年の『ナラ』でデビュー。この年にセルジオ・メンデス(懐かしい)とファッション・ショーのために来日したらしいです。1967年の『5月の風』と1971年の『美しきボサノバのミューズ』を聞いていますが、『美しき~』がいいです。主としてギターとのデュオですが、24曲中19曲がアントニオ・カルロス・ジョビンからみ。時々はいるトム(ジョビン)の訥々としたピアノがいい。

 聞いていて心地よいのは、メロディのよさに加えて、ナラの声の質、歌いぶり、単調なようで、複雑な和音で変化があります。以前にも書いたのですが、ボサノバってアフリカ的な荒々しいサンバのリズムよりも都会的で、ミニマルな音楽です。もっと輪郭のはっきりとした音楽が好きな時もありますが、今はこの少ない動きの中でのいろんなニュアンスを楽しみたい気分です。

 さて1960年代のブラジルは軍部のクーデターで独裁政権がはじまり、ナラは曲でもプロテストしていたせいか目を付けられ、1968年にパリに亡命します。『美しき~』はそのパリでの録音でした。その後70年代は育児などで中断。80年代に再開しますが、1989年脳しゅようのために47才で亡くなります。

  ブラジル音楽の本を読むと、ナラ・レオンのアパート(実家の)に若き音楽家が集まっていたようです。そしてトムとモラエス(詩人、政治家)との交流や、バーデン・パウエルのギターもクラシック(西欧)とサンバ(アフリカ音楽の影響)とブラジルの年音楽の越境によるものだと分かります。

 写真は『5月の風』の方。『美しき~』のジャケットはあまりよくない。しかもこのCDは2枚持っていました。