1920年生まれの画家

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 4月末に1885年生まれのミルトン・エイヴリーや1893生まれのチャールズ・バーチフィールドを紹介しましたが、ウェイン・ティボー(Wayne Thiebaud)は1920年生まれ。と言う事は2回りから3回り若く、一世代違う。世代の違いって約30年の事をいうようですが、人が結婚して子供が生まれる平均的な年数だろうか。20世紀初頭のフォーヴィズムキュービズム、そしてアメリカ特有のリージョナリズム(地方色うち出す)、「ごみ箱派」(都市生活をリアルに描く)、「プレシジョニズム」(物質文明を詳細に描く)などの時代に生まれ、1950代の抽象表現主義やポップ・アートの時代に画家として成長する世代です。

 僕はホイットニー美術館で偶然回顧展に出くわしました。画家80才の時で、今でも存命のよう。近くのグッゲンハイムもそうですが、モダン・アートの展示を主とするこの美術館も変わった外観をしていました。いましたというのは現在は移転したようですから。2014年までアパー・イーストのマディソン・アヴェニューと75丁目の角 にあって、2階の方が出っ張ったような、そしてひっくり返った窓の独特のデザインでした。

   ここでみたティボーのケースに陳列されたケーキの分厚く塗った油絵のカラフルな作品の印象が強烈でした。ポップ・アートより時代的には少し先行していたようにもみえます。高校時代にディズニー・スタジオで見習いとして、グーフィやピノキオの中割りを描いていたり、カリフォルニアとニューヨークで漫画家やデザイナーとして働き、第二次大戦中にはアメリカ軍の映画部隊でもアーティストとして働いた。

  戦後はカリフォルニアの大学で学士号、修士号を取得しサクラメント市立大学で教鞭をとったようです。大学で美術教師として長く勤め、カリフォルニアデイビス校の名誉教授。 ティボーは抽象主義や初期のポップ・アーティストのラウシェンバーグジャスパー・ジョーンズから強く影響を受けるのですが、同時に伝統主義者でもあったようです。

 しかし1962年を境にティボーが全国的にポップ・アーティストとして認知されるようになったのは、リキテンシュタイン、ウォーホルと共にNew Painting of Common Objects(日常的な物体の新しい絵画)展へ参加したからで、この展覧会はアメリカで最初のポップ・アート展だったような。ケーキやパイなどのお菓子=日常的なもののテーマの他に、街並み、都市景観などを描いていますが、斜めの角度や絵の端っこに猫がチョンと座っているなど、ちょっとリアルから離れているのも面白い。これがポップなのかな。