マティス、工芸デザイン的、グラフィズム?

 僕がマティスをポップだと思い、ポップ・アートのウォーホルとの共通点を何となく、根拠もなく感じました。後でその感想を少しだけ証拠を集めようと。

 「工芸デザイン的」と発言したナカムラクニオさんの説明では、マティスが装飾的な布を集めていたり、母親が陶磁器の絵付けをやっていた事も影響していると。さらにマティスが幼児期過ごしたベルギーに近い北フランスのまちは織物製造業がさかんで、マティスはその織物や繊維が大好きだったそうです。

 また「グラフィズム」という表現でマティスをとらえた森村恭昌さんは、グラフィック・デザイナー/アーティスト的な要素をマティスに見出した。そこに「マティスになりたい」と言ったウォーホルを置いてみると少し分かりやすいか。僕の何となくマティスの作風や変化にポップな、そしてポップ・アートを感じていましたから。

 上記の工芸デザイン的とグラフィズムは、純粋?芸術としての絵画に対して、マティスのように幼少からの環境や、美術学校だけでなく装飾美術のクラスも受講したり。また体調や戦争によって切り紙絵製作に向かい、舞台美術も担当するなど、現代の工芸/グラフィック・デザイナーそして商業美術に通じる活動をしたという事からくる表現だと思います。

 1920年代のモダニズムは文学における意識と無意識の問題、言語の問題を扱ったジョイス、エリオット、ウルフを中心とする英文学の動向だったけれど、1960年代のポスト・モダニズムはもっと大きな文化的なパラダイム・シフトになった。僕的にはアメリカのウォーホルのポップ・アートもその重要な一部だったように思います。

 そして時代的には半世紀前のモダニズムの時代に生きたマティスは、自分の生きた環境や肉体的状況や嗜好から、結果的にはジャンルを横断する、技術の上手い/下手をこえた、商業的とも言えるアートを作り続ける事になったと思います。

 つまりアート(芸術)の大衆化≒ポップを目指した現代的なアーティスト(少し言語矛盾)だったと。

 自分の娘を描いた「マルグリット」(1908)を見ると、和田誠のイラストのような筆致にみえます。友人のピカソと交換する絵だったそうな。