アメリカ絵画2

  都市化が進むにつれて、反都市化的な地方主義regionalism)が台頭してくる。リージョナリスト(現在の地方分権を唱える人たちではなく)という中西部(アメリカのハートランド)の特徴を描く作家たちは地方の特徴を称揚し、普遍的な中央の大都市文化に対抗する、一種の田園主義者であった。時代は大恐慌。ヨーロッパではモダニズムの時代だけれど、新大陸では「アメリカン・シーン」と呼ばれるリアリズムの画家たちが活躍した。 その中ではベン・シャーンやチャールズ・シーラーなど都会派はモダニズムに通ずる部分もあるが、それは両面的な文化的傾向でもあった。

  つまりハドソン・リバー派に発するアメリカ的風景から宗教色を減じた自然志向のアメリカ絵画が主流ではあるが、都市を描くものももちろん多い。日本のイラストレーター(山藤章二和田誠など)にも影響を与えた事で有名なベン・シャーンの「ハンドボール」(1931)は都市の片隅で壁を利用してハンドボールをする少年たち。この絵柄をどこかで見たことある?

  指揮者で有名なアンドレ・プレヴィンのジャズ・ピアノ『ウエストサイド物語』のLPジャケットに使用されていた。マンハッタンのウエストサイドはヘルズ・キッチン(映画『スリーパー』の舞台)とも呼ばれていたフッド(犯罪多発地域)である。「ハンドボール」は特にウエストサイドを描いているわけではないが、都市の周辺もしくは貧困層居住区というイメージでとらえられている事は間違いない。

  アメリカン・シーンの画家の一人チャールズ・シーラー(1983‐1965)は写真家兼画家であった。 写真と絵画の関係は微妙だが、シーラーは自分の撮った写真を元に絵を描く事もあったらしい。彼の工場や機関車の車輪を描く超細密画は写真とは別次元のリアルさ(スーパー・リアリズム)を表現していて、それはある種モダニズムでもあり、機能美と物質文明を称揚する立場でもある。

  手法的には細密画派、テーマとしては都市と機械文明と言える画家だが、写真のWindowsのように高層建築が都会の冷たさがなくて心地よい。僕はアメリカ文化論の資料集の表紙に使ったり、NYではこの絵を取り扱ったギャラリーを探して、持ち主に連絡したいと交渉したけれどプラバシーの点から断られた。

次は抽象表現主義とポップ・アートです。