スピリチュアル・ジャズかも知れない

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 Philadelphia出身のジョン・レジェンドのアルバムと同様にどうして買ったかよく分からないアルバム第2弾。

 ビリー・パーカーというドラマーの1974年のアルバムFreedom of Speechです。ビリー・ハーパー(テナー)でもビリー・ハート(ドラム)でもないビリー・パーカーです。管がセシル(トランペット)とロナルド(テナー)のブリッジウォーター兄弟でボーカルがセシルと結婚していた時のディー・ディー・ブリッジウォーター。ベースがセシル・マクビ―で、チャ―ルズ・トリバー(トランペット)とスタンリー・カウエル(ピアノ)が作ったインディ・レーベルのストラータ・イーストの一派である事が分かります。しかも以前ビッグ・バンドの中で紹介したトリバーの『インパクト』にパーカッションでビリー・パーカーが参加していました。ピアノがドナルド・スミスという知らないミュージシャンでしたが、お兄さんがロニー・リストン・スミスというまぁまぁビッグ・ネームかな。

 リーダーのドラムはあまり主張しませんが、アルバム・タイトル(「言論の自由」という意味ですね)や管のちょっとフリーキーなアドリブ、ボーカルの入れ方など、1970年代黒人ジャズの一つの流れとしてのスピリチュアル・ジャズと言えると思います。ライナー・ノーツを書いたジャズ評論家の原田和典さん(元『ジャズ批評』)は「ドロドロ・ジャズ」と評していた長尺の汗臭いジャズという意味です、あまりいい命名とは言えないけれど。

 最後にアルバム・ジャケットの写真をダウンロードするためにアマゾンで調べたら2012年に買っていました。しかもその前後の注文履歴を見ると、ジョー・ボナー(ファラオ・サンダースのアルバムでピアノを演奏していた)とかダグ・カーンとあるので、『スピリチュアル・ジャズ』という本のリストから注文したと判明。紹介にはストラータ・イースト随一の人気アルバムという部分にマーカーが引いてありました。しかしこのアルバム自体はブラック・ジャズという黒人ジャズを推進したレーベルで、ダグ・カーン(キーボード)がそのレーベルのスターだったようです。

 そして真面目に黒人のスピリチュアル的な音楽をやろうとしている(と思う)このアルバムよりも、サイケデリック的と言われるチャールズ・ロイドの60年代のアルバムの方が祝祭的なスピリチュアルになっていると思いました。アメリカの黒人文化におけるスピリチュアルは、公民権運動~コルトレーン的な真面目で時に求道的なスピリチュアルよりも、お祭り的なサイケデリックの方がスピリチュアルの本質を表現している時もあると(自分的に)納得しました。もう少しだけ説明を付け加えると、求道的な方向と祝祭的な方向の二極がスピリチュアルにはあって、求道的な方向はコルトレーン的に極めればよし、しかし中途半端なら祝祭的な方向のジャズの方が聞き手にとってはありがたい(聞きやすい)と思います。中途半端な真面目はダメだよ、という事かな。

 ジャケットの真中の笑顔がリーダー。右下の真面目な顔がセシル・マクビ―。その右下がロナルド・スミスで、お兄さんと似ている、ニットのキャップをかぶっているところも。右上の二人がブリッジウォーター兄弟。下の女性がディー・ディーです。

 ディー・ディー・ブリッジウォーターはマンハッタンの「ブルー・ノート」で聞きました。ピアノがケヴィン・ヘインズ、ドラムがテリ・リン・キャリントンでした。