マティスと金魚(鉢)

    今度はマティスと金魚鉢の4作の紹介。

 モロッコへの旅行で、かの地の人たちが金魚を眺めて瞑想にふけるのに感銘を受けたらしい。

 でもマティスの絵の金魚は瞑想なんて高尚な行為とは無縁のあっけらかんとしたところがいいと思います。アートではなくてポップ。

 

 1912年「金魚」  1912年「金魚と彫刻」

    1914年「金魚とパレット」    1914年「金魚のある室内」

 以上4作ありました。

 さて1912年「金魚」

  マティスの象徴?としての赤。そして赤い金魚と周りの緑のコントラストがいい。テーブルの下の緑も。緑の葉っぱの形も6種類くらいって変化をつけています。それらを囲む黒も全体を引き締めている。少しスカスカの油絵の描き方も、上手いのに下手に見せる後のヘタウマ的技法かな。

 1912年「金魚と彫刻」

  この金魚はいまいち可愛くない。マティス作の彫刻らしい女性ヌードもあまり存在感がない。金魚鉢と花瓶の緑もいまいち。でもバックの青がいい。

 でも自分の作品に別の作品を埋め込むのはマティスの普通の手法ですが、それ自体が作品内作品というある種のインターテクスト≒ポストモダンな手法でもあって、新しい。

1914年「金魚とパレット」

 これは金魚は完全に脇役。前2作と比較すると直線が明確な印象を与えます。手前の黒い板とバックの青のコントラストが鮮烈です。それと金魚鉢の位置と大きさがタイトルの重責?を担っている。マティスの黒も重要かも。

1914年「金魚のある室内」

 これは金魚(鉢)4作の中では一番有名かも。中心の金魚鉢と台が全体の構成を絞めている。床と壁の黒に近い青が暗くて効果的です。さびしいようで力強くもある。窓の外のビルはいい脇役。マティスの赤ほどではないけれど、青も重要だと思いました。 そう言えば、会話のなさそうな二人の「会話」の青もとてもよかった。