「本当の〇〇人」とは?

 6月にフランスで起きた暴動ですが、これはいつ起きてもおかしくないような気がしていました。

 すぐ連想したのが1995年の映画『憎しみ』(La Haine)。

今回と同様、パリ郊外の移民が多い「バンリュー」が舞台でした。監督はマチュー・カソヴィッツスピルバーグの『ミュンヘン』で爆弾担当のロバート演じていました。

『憎しみ』の方は現実と同様、移民の若者が警官の暴行を受けて重体になり、「バンリュー」で暴動が起きます。その中で主人公のユダヤ系、黒人、アラブ系の若者が警官の拳銃を手に入れて、物語が展開する。

 その話は少しややこしいので、フランスの歴史と人種問題にしぼって考えてみたい。

 また映画がらみですが、『アルジェの戦い』(1966)がフランスの植民地だったアルジェリアの独立を描いて衝撃的でした。監督はユダヤ系イタリア人のジッロ・ポンテコルヴォ。素人を使ったドキュメンタリー的な手法の白黒映画でした。チンピラがフランスの支配に対してしだいに独立運動の地下抵抗組織のリーダーになっていく。最後にフランス軍に殺されるのですが、地下放送で「アリ(主人公)は生きている」と仲間が叫び、アリと仲間の自由への意思は引き継がれ感動的でした。

 同じ年にアメリカ映画『名誉と栄光のためでなく』というアラン・ドロン主演の戦争映画が紹介されました。これは第1次インドシナ戦争ベトナムとフランスの戦争)からアルジェリアに転戦するヒューマニストの軍人(ドロン)。でもこれは旧宗主国(フランス、アメリカ)側の立場に立った娯楽映画でしたね。

 ベトナム戦争北ベトナムアメリカの戦争と考えがちですが、フランスの植民地だったベトナム独立戦争にフランスが負けて撤退した後に、米ソの冷戦の代理戦争としてベトナム戦争が長引きます。

 フランスの旧植民地からの移民、それ以外の移民、アジア系、ユダヤ系の人々が「本当のフランス人」ではないとされて、様々な局面で差別をされてきた。サッカーのジダンはフランス生まれのアルジェリア移民2世。しかも民族的にはアルジェリアの多数派であるアラブ人ではなくベルベル人アフロ・アジア語族)のようです。

 この「本当の〇〇人」という頑な多様性を配慮しない考えは、いろんな国で存在しますね。