昨日読み終えた『鬼火』(講談社文庫)のハリー・ボッシュは2019年のThe Night Fireの翻訳で、マイクル・コナリーの33冊目の長編、ボッシュ・シリーズとしては22作目、ハワイ出身の女性刑事レネイ・バラードの3作目、ボッシュ&レネイものの第2弾です。
実は今回のボッシュは僕と同年齢の69才の設定で、ひざの手術をして杖をついています。『汚名』(2017年、2020年翻訳)で膝を撃たれた?んです。しかも本作の途中では、だいぶ前の事件で放射能を浴びて、軽度の白血病に罹っている事に言及してもいます。これは『死角』(2007年発表、2010年翻訳)での放射性物質を使ってのテロ事件に関係した時の事。ボッシュは一人娘のマディの学費やその後を考えて、市警に障害補償の訴訟を起こそうとしています。どうも30年以上いたロサンゼルス市警からは最後は追い出されたような形になっていて、その後もあまりうまくいっていないような。
でも事件に食いついたら放さない野獣の?ような刑事魂は健在のようです。またこれがきっかけで旧作を読み直しています。全部がいいとは言わないけれど、レネイ・バラードの1作目『レイト・ショー』は前にあまりきちんと読んでいなかったのか、初めてのように新鮮な気持ちで読めました。
さて写真の方は、ボッシュ・シリーズを読んできる人にはおなじみのボッシュの家です。片持ち梁という特殊な工法の家で、テレビ版での画像です。片持ち梁は例えば、住宅の屋外駐車場などで使う工法ですが、崖の上の住宅で使うのは危険性も考慮すれば一般的ではない。あの帝国ホテルの設計で有名なフランク・ロイドの「落水荘」(1936年)もcantilver(カンチ・レヴァー、片持ち梁)です。規模は少し(だいぶ)違うけれど。
ま、ボッシュのような人物ならではの家選び。で、こんな家が地震の多いロスで大丈夫と思いますが、当然のように地震の被害にあう状況が『ラスト・コヨーテ』で描かれます。でもこんな危ない場所から見るロスの夜景はきれいでしょうね。『ヒート』でも、銀行強盗のデニーロが付き合い始めた女性に見せる景色として選んでいます。でも僕は人口的な夜景よりも自然の風景の方がいいな。NHkの『日本の山里』の素朴で包み込むような景色が郷愁を呼ぶような気がします。