ジャック・ぺラン、永遠の美少年

  朝刊にフランスの俳優ジャック・ぺランが80才で亡くなったと報じられていました。

 一般には『ニューシネマ・パラダイス』(1989年)の成長し映画監督となった主人公のトトを演じた事で知られていると思います。僕は1967年の『ロシュフォールの恋人たち』での夢見る水兵が印象的でした。これについては映画は凡作?ですが、音楽がいいと繰り返し書いています。でもジャック・ぺランのフランスの水兵の衣装が似合っていました。

 映画史的には『鞄を持った女』(1961年)。イタリアのズルリーニ監督、主演クラウディア・カルディナーレカルディナーレが追いかける男の弟役。カルディナーレは中学の時にファン・レターを出して、サイン入りの写真が返信されてきました。同じズルリーニ監督の『家族日誌』(1962年)はマストロヤンニの弟役で、こちらの方が有名かも。弟役のキャラかも。

 そして『ロシュフォールの恋人たち』の翌年の『うたかたの日々』。これはボリス・ヴィアンの原作。なんかファンタジーのようなSFのような、当時の美青年ジャック・ぺランに合っていました。パリに住む金持ちの青年で動物とコミュニケーションができたり、奇病に悩む恋人がいたり。

 ヴィアン自身が心臓に病を抱えた、才人(変人)でした。ジャズ・トランペットを吹いたり、ジャズ評論や詩を書いたり。「北京」とも「秋」とも関係のない『北京の秋』というタイトルの小説を書いたり。『墓に唾をかけろ』なんて人種にからむアメリカが舞台の問題小説?を書いたり。そしてその映画化作品を見て、これはひどいって憤死?したんです。

 ぺランに戻って。1969年にはけっこう政治的な『Z』を製作・出演します。監督はギリシャ出身のコスタ=カブラス。 架空の国(モデルはギリシャ)の軍事政権下の反政府的な政治家(イブ・モンタン)の暗殺とそれを捜査する検事(ジャン・ルイ・トランティニヤン)、ジャック・ぺランはジャーナリスト役でした。政治サスペンス的な面白い、ドキドキする映画でした。硬派なぺランは『戒厳令』(1972年)でもカブラス監督を補佐する製作(出演はなし)に回っています。

 「永遠の美少年」というのは、当時の映画ジャーナリズム(硬派ではない方)で、「永遠の美青年」アンソニー・パーキンスと対をなしていたんです。ヘップバーンやジェーン・フォンダと共演したアイビー・ルックの似合うパーキンスは『サイコ』がヒットした事により残念ながら、違う方向に行ってしまいました。

  ぺランの方は、映画歴も軟硬とりまぜてバランスよく。映画誕生100年を記念する『リュミエールの子供たち』を1995年に製作していますので、映画と言うメディアを愛していたんだなと。よき映画人として人生を全うしたように見えます。