『スリー・ビルボード』も面白い・・・

 『スリー・ビルボード』は2017年作。監督はマーティン・マクドナーアイルランド系イギリス人。アイルランドを舞台とする、ブラック・ユーモアを特徴とする作風。

 主演はまたもフランシス・マクド―マンド。と言うか彼女の主演で面白い映画を見直しているからそうなる。

 評価としてアカデミー賞の主演女優賞、助演男優賞(後述)、『キネマ旬報』第1位。

 ストーリーを1行で書くと「娘をレイプで殺された母親が捜査が進ままないのを不満に思って、3台の広告版に抗議のメッセージを張り出す。」。う~ん、1行では収まらない。

 さてこの『スリー・ビルボード』もアマゾンのプライム会員の特典で無料視聴。再見です。

 2回見ると、大まかなストーリーとエンディングは分かっているのですが、細部について気が付く事が多々あります。

 実はエンディングもそうだったっけと、あまりきちんと見ていなかった事にも気づきます。

 マクドーマンドは『ノマドランド』と同様、タフな女性を演じます。その他に署長を演じたウディ・ハレルソンと署員のサム・ロックウェルに注目。

 ハレルソンは『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994)のせいかエキセントリックな切れやすい役を演じるイメージです。実は本人も警官やパパラッチを殴ったり、マリファナを栽培したり、問題行動というか事件を起こしやすい人物にのよう。でも一方では環境保護反戦などの活動もしている。最近紹介した『ノー・カントリー』では究極の悪とも言える殺し屋にあっさり片付けられる。でもこの作品では、有能とは言えないかも知れないけれど、町の人や署員、家族に愛される好人物を演じています。でも末期がんで、自殺をしてしまう。でもその遺書で主人公やレイシストの警察官ディクソンに影響を与えます。

 さてそのレイシストで、でも署長を敬愛する無能な署員を演じるロックウェル。僕はこの作品で注目しました。映画の後半では、署長の遺書にうたれて改心して、マクド―マンドに協力するようになります。そのあたり、見ていて心地いいのですが、ちょっとそんなに簡単に改心するのという意地悪な気持ちも。

 実はロックウェルはいい役を演じていました。このブログでも紹介した『みんな元気で』ではデニーロの息子役。例さらに『ベスト・オブ・エニミーズ~価値ある闘い~』(2019)でもKKKの幹部ですが、映画の中で変わっていく役のよう。

 でこの『スリー・ビルボード』の主人公ミルドレッド・ヘイズ(フランシス・マクド―マンド)は本当にタフ。警察の署員はもちろん、町の人々にも嫌われてしまう。さらには家族にもあきれらる。息子や元夫。でもめげないタフさは、あきれつつ感心もします。

 監督はブック・ユーモア的な作風だと言いますが、アメリカでの映画もそのように作られている。そしてユーモア(笑い)がブラックなのはリアルで悲劇も含んでいるから。

 写真は3つの看板のうち、2番と3番目です。1番目は「レイプされた」事について。それを受けて「まだ逮捕されていない」、「ウィロビー署長は何しているの?」と辛らつです。

 タイトル(英語)も意味を持つような。Three Billboards outside Ebbing Missouriミズーリ州エビング。ミズーリ州はいわゆる中西部と呼ばれる地域です。州都はジェファーソン・シティ、最大の年はカンザス・シティ、最大の都市圏はセント・ルイス。このセント・ルイスには行った事があります。

 で架空の町エビング(「引き潮」、「潮が引く」という意味)は普通の中西部の町。東部や西部の大都会とは違い、また南部の比較的人種差別の残っている地方とも違う。ある意味で、中西部とはアメリカ以外の人があまり知らない、普通のアメリカなのだと思います。

 でラストは覚えていませんでした。実は改心したディクソンが容疑者と思える人物の捜査をしましたが、犯人ではない事が判明します。でも明らかにレイピストであり、その人物を消しに?ディクソンはミルドレットと出発します。ブラックな喜劇と言えるでしょう。『ノマドランド』のような静かな感動はないけれど。ま、別なジャンルのすぐれた映画かな。