ミシシッピ州フィラデルフィアで3人の公民権活動家が行方不明になった。その捜査のために2名の捜査官が現地に出向く。調査は地元のKKKや保安官たちの妨害に合う。そんな中でたたき上げの捜査官アンダーソン(ジーン・ハックマン)は保安官補の妻に情報をもらう事ができた。人種差別的な夫や周りの人々に違和感を感じて、アンダーソンと気持ちが通じ合う保安官補夫人をフランシス・マクド―マンドが演じて印象的でした。ここではまだタフまではいかないけれど、芯の強い気丈な女性を演じていました。それが1988年の『ミシシッピ・バーニング』(アラン・パーカー監督)。
でデビューの『ブラッド・シンプル』(1984年)も見ているのですが、ここでは悪徳?私立探偵を演じるエメット・ウォルシュの怪演が圧倒的で。それと妻と従業員の浮気を疑う酒場の経営者を演じるダン・ヘダヤも個性的です。『ジャグラー/ニューヨーク25時』(1980年)だったか、何か狂気を宿したこわい人物を演じる俳優というイメージがあります。
もちろん『ファーゴ』(1996年)はアカデミー主演女優賞その他いろんな賞をもらっているので、僕があまり書かなくてもいいかなと。
僕は『あの頃ペニーレインと』(2000年)が印象に残っています。2009年8月24日のブログで書いていました。https://seiji-honjo.hatenadiary.org/entry/20090824/1251066693
若くして『ローリング・ストーン』誌に記事を書くようになった主人公の母親を演じています。厳格な大学教授の母親が最後に娘と息子にニール・ヤングのOnt the Way Homeのレコードを聴かせます。歌詞は男女の愛の歌のようですが、親子の愛情についてと受け取ってもいいように読めます。ここでのフランシス・マクド―マンドは毅然として、でも愛情をもって子供たちを見守る母親をやはり説得力の演技で見せてくれます。それが評価されたのか、8つの助演女優賞を受賞しています。アカデミー賞は逸していますが、この受賞の数はすごい。
そして、だいぶ飛びますが、2017年の『スリー・ビルボード』ハードだ。娘を惨殺された母親が、地元の保安官の怠慢を広告の看板で訴える。これはタフというよりも非情な復讐も辞さないハードボイルドな母親を演じています。普通ではないけれど、アメリカならこんな母親もいるかも知れない。そんなぎりぎりの人物像をリアルに、時にはユーモア≒余裕をもって演じていました。
『ノマズランド』(2020年)。これもアメリカ社会の病巣を描いた作品と言える。数十年前からトレーラー・ハウスで暮らしたり、トレーラー・ハウスが集まっている場所があったりしましたが、場所を移動する車中生活者が増えている。ノマドはちゃんとした文化的歴史的背景を持った遊牧民と、遊牧民と似ているけれど非なる現代の放浪する人々。定住する家と資産を持たない人々、現代社会の被害者としての現代のノマドだと言えます。
そんな現代のノマドについてのルポルタージュを読んだフランシス・マクド―マンドは映画化権を買い、監督も自分で選んで主演をします。それもアカデミー主演女優賞を受賞するとは。キャサリン・ヘップバーン アカデミー主演女優賞4回に次ぐ、3回の主演女優賞受賞。メリル・ストリープ、イングリッド・バーグマンに並ぶとありましたが、この二人は主演2回+助演1回なので、フランシス・マクド―マンドの主演女優賞3回の勝ち?
少しだけ『グロリア』とジーナ・ローランズとジョン・カサヴェテスに関係しますが、演じている役柄や、監督である夫との継続的な関係も素敵だと思えます。