ドリトル先生と面白キャラ

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 井伏鱒二の『駅前旅館』は峰岸達の表紙はよかったけれど、内容は期待した割には・・・でも森繁久彌主演による映画はヒットして「駅前」シリーズは24作も続いたらしい。

 井伏鱒二の名前を知ったのは、小学校の教科書での「山椒魚」。これって小学校で読んで習った?どうもそうらしいけれどはっきりと覚えていない。でも僕らが小学校の頃も教科書に出ていたので習ったのでしょう。そのあたり後からの情報による記憶の補強やら訂正や改変もありうるけれど。

 この短編は大きくなり過ぎて洞窟から出られなくなった山椒魚の悲嘆と諦めの物語ですが、何かを象徴している寓意物語として解釈されるようで、権威をもって不自由になったインテリとか、対比して自由に動き回る蛙が若者であるとかあるらしいです。それと後からラストを削ったので、それは作者の横暴だとか、変えるのは作家の勝手/自由だとか。また後になって作家がそれを後悔するようなコメントをしたのでそれもまた非難されたとか、一短編をめぐっての物語もあるんですね。

 で僕は井伏鱒二というと、この短編と中学校の時に読んだ『ドリトル先生』の翻訳と、後になって知った太宰治との先輩・後輩としての交友関係で関心がありました。太宰治って好き嫌いはあるでしょうが、やっぱり小説はうまいと思います。でも自殺未遂を高校以来3回もやっているし、薬物依存もありそうだし、普通の人生はおくれなかったのかなぁとも思い。

 ここでは『ドリトル先生』について、登場人物が面白い。登場人物というかオシツオサレツという奇妙な名前の双頭の奇妙な動物が子供心に印象に残っていました。でもこれがpush-me-pull-youの訳だと後から知ります。

もう一つは「猫肉屋」のマシュー。え、猫の肉を売っている?!これもだいぶ後からcat's-meat manというペットとして飼われている猫や犬の餌としてくず肉を巡回販売する仕事だと知ります。それも買主の家に肉を持って行くのではなく、飼い主と契約?をして通りで猫や犬に肉を与えるんです。でもどうやって代金をもらった飼い主のペットとその他の猫や犬とを区別できるのか気になりますが、だいたいは分かるらしいです。という事は野良猫、野良犬も餌を盗みもらいに来る事もあると。

 最後にロンドンっ子の雀チープサイド。チープサイドは実際にあった地名ですが、いかにも下町という名前。そのちょっと生意気な雀の話す言葉がロンドンの下町なまり、という事はコックニーです。エイがアイになり、hの音が抜ける(発音しない)。『マイ・フェア・レディ』のイライザがヒギンス教授から習う”The rain in Spain stays mainly in the plain.”が有名ですね。確かに本当にロンドンではこのように話されていました。因みに雀の名前のチープサイドはセント・ポール寺院のすぐそばにあって、寺院にも近所の旅行代理店(ミキ・トラベル)に行った記憶があります。たぶんジェームズ・ジョイスの縁の場所を訪ねるためにダブリンに旅行した時だと思います。

 ちょっと面白いのはイギリスでも階級差による英語の違いは少なくなってきたという説もあり、またストリート・カルチャーとして受け入れられているのか、エリートの若者がわざとコックニー訛りで話すらしい。でもそれって東京の人が大阪弁を下手にマネするみたいに真似される側からするとあまりいい気分ではないでしょう。

 逆にサッカーのベッカムはワーキング・クラス出身のコックニー訛りの英語と言われ、最近は直しつつあるとも言われます。ベッカムのようにサッカーのスターで二枚目で、性格も悪くなさそうにやっぱり訛りを気にするんですね。日本では明治時代に東京の山の手言葉を基本に標準語を作りましたが、従順な国民性もあり、比較的短期間で流通しました。でも方言って温かくていいですね。だいぶ前に出張で弘前に何度か行った時に聞いたなまりがとても素敵でした。バーのママも、喫茶店で後ろでしゃべっているおばさんたちの会話もとてもかわいらしかった。

 最近うちの雀たちも僕が庭で作業していても餌(米)を食べてくれています。少しなついたかな。