・『ある愛の詩』(1970)は、ジャズやロックを聞いて、アメリカン・ニューシネマ的な映画を見ている若者(僕もふくめて)は当時は関心のなかった(無視していた)タイプの映画です。
・数日前に、映画の好きなテニス仲間が話題にしたこの映画の有名なセリフ。
・「愛とは決して後悔しない事」は”Love means never having to say you're sorry”の訳です。
・『カサブランカ』の「君の瞳に乾杯」よりも間違っている。「君の瞳に乾杯」は映画の中で4回使われていて、そのうち2つの場面にはまぁあっていて、後の2つの場面ではこの訳では間違っているケース。
・で甘ったるい映画『ある愛の詩』の迷セリフ。
・”Love means never having to say you're sorry”は「愛し合っていれば、相手に謝る必要はない」という意味です。
・アメリカのネットの説明で”The line has also been criticized and mocked for suggesting that apologies are unnecessary in a loving relationship.”とありました。「このセリフは、愛し合う関係においては、謝罪は不要であるという事が批判や揶揄の対象となっている」という意味です。
・何故おちょくられるかと言うと、愛を理想化している、ちょっとロマンチックで現実離れしているからでしょう。
・映画の場面では、ジェニー(女主人公)が恋人のオリバーが”I’m sorry.”(ごめん)と言うのに答えた言葉です。オリバーがジェニーに怒ってしまった事に対する謝罪。でジェニーからすると相手(you)を主語の”you're sorry”に言い換える。
・2回目は病気でジェニーが死んだ後に、結婚に反対していたオリバーの父親が”I’m sorry.”と言iいます。
・この”I’m sorry.”は普通の2つの意味の両方/どちらかを意味しています。つまり「(結婚に反対して)すまなかった」、もしくは「(愛する人をなくして)気の毒に思う」という意味。
・それに対して、オリバーは自分がなき恋人から言われた言葉を繰り返します。”Love means never having to say you're sorry”と。
・ここで息子が父親に言っているのは「愛があれば、相手に謝る必要はない」。つまり「お父さんは僕の事を愛しているなら、謝る必要なんてないんだよ。」
・またはもっと厳しく。「愛があれば、相手に謝る必要はない」のに、「お父さんは謝るなんて、僕の事を愛していないんだね。」と息子から父への決別の言葉の様にも聞こえます。
・もともと「愛とは決して後悔しない事」も、どうも分かりずらい。というか「愛」の実相を理解していない表現です。ま、よく言って「愛についての理想論」かな。
・つまり、愛してしまった女性との結婚を親に反対される。病気でなくなってしまう。そのような悲劇に至る気持ちや判断を後悔していない。その相手を愛しているから。
・これはこれで「愛とは決して後悔しない事」の意味として反論できない。
・でも「愛」(恋愛も、親子の愛も)が「後悔しない事」は現実から考えると絵空事のように思えます。みんな何となくそう感じているから、理想論をからかいたくなるんですね。
・「愛」だろうが何だろうが、人間の行為には後悔が付きまといます。
・「後悔」は行為に必須?で、その後に反省して前を向いてやり直す事ができるかどうかが問題。
・最後に「愛とは決して後悔しない事」は主演の二人からも、ちょっと皮肉られている事を報告します。
・オリバーを演じたライアン・オニールの『おかしなおかしな大追跡』(What’s Up, Doc?、1972)。ワーナー・ブラザーズのマスコット・キャラでもあるバッグズ・バニーのアニメWhat’s Up, Doc?のタイトルをもらい、背景にしたドタバタ喜劇。
・最後の場面で、ライアン・オニールが主演のバーブラ・ストレイサンドにそれまでの行動を謝罪し、愛を告白します。それに対してバーブラは”Love means never having to say you're sorry”と言いますが、それに続くオニールの言葉は"That's the dumbest thing I ever heard."。何と「今まで聞いた一番下らない言葉だ」と皮肉ります。
・さらに主演女優のアリ・マックグローも'crock'(古臭い、ナンセンス)と言っているようで、原作者や監督は形無し。
・写真は「愛し合っていれば謝らなくていいの。代わりにメールを送れるし」と言っています。愛や謝罪の表現も時代によって変わっていく。