『愚かなり我が心』を観る

 1949年の映画です。原作の「コネチカットのひょこひょこおじさん」Uncle Wiggly in Connecticutは前年、The New Yorkerに掲載。ずいぶんと早い/速い映画化。これは9月のブログでもジャズ絡みで書きました。でも今回は映画の感想。

 主人公のエロイーズ(スーザン・ヘイワード)を大学時代のルーム・メイトのメアリー・ジェーンが久しぶりに尋ねます。ちょっとアル中気味のエロイーズはもうお酒を飲んでいて、友だちにも勧めます。そのうちに学生時代の話になり・・・

 ダンス・パーティでウォルト(ダナ・アンドリュース)と出会い、恋仲になる。Uncle Wigglyのエピソードはウォルトが足をくじいたエロイーズの事を、足首(ankle)とuncleをひっかけてからかうんですが、映画ではこのエピソードが繰り返される。最初は食器で手を切ったエロイーズをUncle Wigglyと呼んだり。「どじ子」って言うような意味かな。

 戦争がはじまり、徴兵されたウォルト(実はグラス家の3男)は原作では第2次大戦後の占領中の日本で事故死(戦死ではない)したのですが、映画では出撃する時に飛行場で爆発?して亡くなります。

 主演のスーザン・ヘイワード、31才。ダナ・アンドリュース、38才。女子学生の場面は少しむずかしい。しかもこの二人、それ程魅力的はないけれど、サリンジャーの原作をどのように同映画化しているのか関心があるせいか、それなりに面白く見る事ができました。原作ではウォルトはほとんど登場しないけど、恋愛劇なので映画では副主人公の扱いです。

 ダナ・アンドリュースは『ローラ殺人事件』(1944年)、『影なき殺人』(1947年)、『歩道の終わるところ』(1950年)などフィルム・ノワールの常連でした。僕はフィルム・ノワールのファンでいちおう研究もした事があるので、全部見ました。

 『ローラ殺人事件』と『歩道の終わるところ』は監督(オットー・プレミンガー)と主演二人が同じ。主演の一人ジーン・ティアニーはお気に入りの女優です。でも作品によっては魅力的でないという事は、当然のように作品、監督の力が大きい。『影なき殺人』はエリア・カザン監督。『紳士協定』(1947)の次に作った社会派的なフィルム・ノワールでした。

 カザンと言えば、その後『欲望という名の電車』(1951)、『革命児サパタ』(1952)、『波止場』(1954)、『エデンの東』(1955)を撮った円熟期。でもその間に赤狩りがあり、カザンは仲間の名前を挙げてレッド・パージを逃れました。1998年アカデミー賞の名誉賞を受賞した時に、普通はスタンディング・オベーションで称えるの対して、座ったままの映画人も多かったようです。

 Victor Young作曲のMy Foolish Heartもバーの場面で歌われていました。ジャズのスタンダードStella by Starlightもヤングの曲。