『ミスター・メルセデス』の続き

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 シーズン2はホッジス刑事3部作の3作目『任務の終わり』、シーズン3は3部作の2作目『ファインダーズ・キーパーズ』を基にしています。

シーズン2では被害者の従妹で、退職したホッジスが開いた探偵事務所「ファインダーズ・キーパーズ」に勤めるホリーが「メルセデス事件」に続く凶行を働こうとするブレイディを阻止する。ブレイディは殴られて、病院で3年昏睡します。しかし中国の製薬会社の重役を妻にする医者が投薬と脳の手術でブレイデイを覚醒させてしまう。しかもブレイデイは体は動かないけれど、脳内から病院の看護師を操作してホッジスを襲ったり、同じ病院の作業員を使ってブレイデイに悪意を持つ検事の飼い犬を惨殺する。

 病院を抜け出たブレイデイは宿敵ホッジスへの復讐を計画しますが、投薬を続けないと腫瘍になると医者に脅かされて自首します。投薬を受けたブレイデイは少し人間らしく後悔などして、弁護士はその事を利用して別人格になった人物を前の人格の時の犯罪で裁くことはできないと抗弁します。確かに少し人間らしくなったかもしれないけれど、同じ人間であると事は変わらない。精神と肉体の二元論ではなく、精神や性格が多少なりとも変わる事はあっても統一体としての同じ人間だから。アイデンティティー的に変わると言えば、一人の人間は常に同じではなく変わり続ける。で、その裁判中にブレイデイに刺された元同僚が、恨みとこれ以上ブレイデイの被害者を増やす可能性を恐れて銃で殺します。

 シーズン3はホッジス刑事3部作(Bill Hodges Trilogy)の2作目『ファインダース・キーパース』。オハイオ州のブリッジトン在住の大作家ロスステインが強盗(作家のファンでもある)に殺されます。原作はまだ読んでいませんが、ホッジスがブリッジトンに住むきっかけはその作家だったとか、隣に住む老婦人が実は作家と関係があったとか、登場人物と関係づけていますが、ブレイデイで引っ張ったシリーズ1と2のようなけん引力はない。

 作家を襲った犯人も作家の小説に影響されたと言う設定です。でその犯人が途中で事故にあって放置された車の中にある作家のお金と原稿を、犬を散歩していた高校生が見つけます。そのお金と原稿がそれを探す泥棒と相棒の年上の女、隠そうとする高校生とその家族(父親は「メルセデス事件」で足を悪くした被害者)とつながりますまた高校生が通う学校にホッジスの隣人が非常勤として教えていて接点があります。

 この事件とホッジスの関係があまり説得力を持たないような。ロスステインはブルース・ダーンが演じていてあまり作家らしくない。作家らしいって何かといわれると困るけれど。ブルース・ダーンは『華麗なるギャッツビー』(1974)のトム・ブキャナン、ヒッチコック最後の作品『ファミリー・プロット』(1976)での準主役、『ブラック・サンデー』(1977)でも準主役、『帰郷』(1978)でもビリング3番目。そして『ネブラスカふたつの心をつなぐ旅』(2013)で主役です。この主役の映画以外はすべて見ていますが、そんなにいい俳優と思わない。

 ロスステインは架空の名前ですが、フィリップ・ロスのようなユダヤ系作家を連想させます。ザッカ―マン三部作やアメリカ三部作もあります。亡くなっているのは2018年。もう一人ジョン・アップダイクはどうだろうか。アップダイクはユダヤ系作家として扱われていないのですが、その風貌を見るとユダヤ系に思えます。有名なラビット・シリーズもあります。こちらは2009年没。でもテレビ・シリーズのように作家のもつ怒りが作品を通して読者に伝わるような作品ではないのですけれど。

 原作とテレビの関係についても、ホッジス刑事3部作(Bill Hodges Trilogy)通りにシリーズを組み立てた方がよかったように思います。つまりシリーズの2を作家の話を軸にしてシリーズ1~3の中間部たるブリッジにして、シリーズ3にブレイデイが再登場して最後にその命運を終わらせる大団円とする。シリーズはボッシュ、マッドメン、スイーツと連続して、集中?してみていますが、終わらせ方が難しい。

 これから原作を読んでみます。 

 写真はホッジスと元妻のドナ。よりを戻しそうになって、そのまま話が終わったような。ナンシー・トラヴィス@『スリー・メン&べービー』で有名になりました。