取り残される恐怖@『ベルファスト71』

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アマゾンで『ベルファスト71』(2014)を見ました。タイトル通り1971年の北アイルランドの首都ベルファストにおける紛争を描いた映画で、Sunday, Bloodt Sundayの「血の日曜日事件」(1972年)の直前です。

 主人公は暴徒鎮圧に駆り出される若き英国軍兵士ゲーリー・フック(演じるのはジャック・オコンネル)。暴徒の中に仲間と取り残されて、しかもその仲間は頭を撃たれて即死。そのIRAの暗殺者の横に立っている無表情の少年ショーンが印象的でした。演じるのはバリー・コーガンという撮影当時22才の俳優。小柄(170)なので少年に見えました。最初は無表情が怖い。最後は主人公を助けるのですが、間違って?殺されてしまいます。日本語のwikiにプロフィールが訳されているレベルの俳優で、やはりちょっと悪い役が多いようです。

仲間が撃たれた後、ゲーリーは街の中に一人逃げ込みます。その路地や家の隙間や塀を乗り越えての必死の逃亡の緊迫感がすごい。10~15分くらいあったかなと思っていましたが、先ほどカウントしたら5分ほどでした。実はそれが続けばいいのですが、それは無理としてもその後の展開は少しのんびりしていて編集して短くすればいいと思いました。ネットでも同様の意見が。

 しかもゲーリーの迷い込んだ街にはIRAに代表されるアイルランドカソリックナショナリストの過激派とプロテスタント系のロイヤリスト(王党派)が同居しています。イギリス軍と対立するIRAと仲の悪いロイヤリストもいて、ゲーリーを助けるのは、ロイヤリストの少年。その少年のお父さんが仲間とパブの裏で爆弾を作っていて、それが誤爆してしまいます。

 それでけがをしたゲーリーを助けたのが、今度はIRAの穏健派?過激派は逃げたイギリス人兵士を探しています。かくまった穏健派の人も迷ったり、人道的にふるまおうとしたり。最後に過激派に見つかり、ショーンがゲーリーに銃を突きつけつつ引き金を引くことに逡巡します。そこに駆け付けたイギリス軍がショーンを射殺してしまう。正義や真偽の線引きが曖昧な最前線の過酷な状況を象徴している場面でした。

 最後は、最初のシーンと呼応して、たぶん孤児院にいる弟を連れ出して街で時間を過ごすゲーリーの場面。たぶん孤児の兄弟なのでしょう。写真はゲーリーとショーンの2ショット。見つけました。