モーム、ヒッチコック

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  昨日は緊急事態宣言の初日でしたが、午前中たっぷりと?テニスができました。いつもは10名以上年寄りが集まるのですが、さすがに8名くらい。方針について協議中なので、日曜までできますという回答だったそうです。でも閉鎖しているコートもあるとか。そしてうちの方のコートは土木センターから管理人に9月12日まで締めますと連絡があったそうです。どうもこんな簡単なことでもちゃんと前もって協議して方針を立てていないのにあきれてしまう。

 さてなぜかサマセット・モームに関心が生じて、『アシェンデン』(ちくま文庫)を読んでいます。

 いま連想ゲーム風にこんな経緯だったんだろう思い出しました。漱石~オースティン~『自負と偏見のイギリス文化―J・オースティンの世界』(新井潤美岩波新書)~『パブリック・スクール』(新井潤美岩波新書)です、とりあえず。でたぶんパブリック・スクール文化とオックスフォード/ケンブリッジ、その出身の作家へとつながって行ったのでしょう。

 サマセット・モームは1950/60年代くらいまではかなり日本でも読まれていたと思います。でも今は・・・

 『アシェンデン』、「英国秘密情報部員の手記」という邦訳サブタイトルを持つAshendenは1929年の作品なのでほとんど100年前。16本の連作短編で、そのうちの「毛無しのイギリス人」と「売国奴」を原作としてイギリス時代のヒッチコックSecret Agentとして1936年に映画化をしました。邦題は『間諜最後の日』。アシェンデンは作家兼スパイの主人公の偽名です。

 けっこう面白かった。モームは戦後英語テキスト(たぶん大学の)として使われます。これもたぶん戦後の大学の英語教師が好んで読んで、しかも比較的難しくない英語でストーリーも面白い。そして少し(けっこう)シニカルな人生観も好まれたのでしょう。娯楽と文学の中間的な小説と言えますね。

 難しい英語と言えば、ジョン・ル・カレは大学教師のイギリス人も難しいと言っていました。モームと同様、実際に自分も情報部員だったグレアム・グリーンの『ヒューマン・ファクター』(1978、翻訳83年)もそばにおいています。これはけっこう面白かった、例のフィルビー事件をモデルにした二重スパイの物語です。

 この英国の作家と、二重スパイの話は次でゆっくりと。

 写真は『間諜最後の日』。大きく映っているのはアシェンデン夫人/女スパイを演じるマデリーン・キャロル。ジョン・バカンの『三十九階段』を原作としたヒッチコックの『三十九夜』(1935年)でも主演をしているイギリスの女優です。左上がアシェンデンのジョン・ギールガット。シェークスピア俳優として知られる、実はポーランド貴族の末裔です。また実はですが映画化された『ヒューマン・ファクター』にも出てています。これもまた次で、左下が将軍役のピーター・ローレ。『マルタの鷹』(1941)、『カサブランカ』(1942)にも出ているハンガリー出身のユダヤ系の俳優です