ジャンルの神話

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『「アメリカン・ニューシネマ」の神話』という1998年の本を読んでいます。これが家の中を何度も探してやっと見つけました。ないと覚悟して(たぶん捨てたんだろうな)アマゾンで見ると中古1点のみ。それも状態が「可」で読むには支障のないという、自分の本棚でのそのような状態ならOKだが、人手による結果ならあまり手にしたくないのでパスをして、それなしで準備を進めようかなと思いつつ、ふと見ると本棚なの端っこにありました。

 メインの書き手が遠山純生(『フィルム・ノワールの光と影』1999)と上島春彦(『レッドパージ・ハリウッド』2006)と骨太の映画評論家なので、やはり読み返しても読みごたえがありました。

 それとこれは結構知られていますが、「アメリカン・ニューシネマ」という批評用語というかジャンルを指し示す言葉は日本独自のもので、アメリカではNew Hollywood, The Hollywood Renaissance, American New Waveと名付けられたようです。そしてその定義やジャンルに入る映画も違ってきます。それを理解した上での、ある時代的な特徴と映画的な個性をどのように評価していくかが重要だと。

 それで本のタイトルにある「神話」という言葉で少し客観的に評価し、同時にジャンルといってもいい特徴もあるとしている訳です。簡単に言ってしまえばアンチ・ヒーローの登場する、ハッピー・エンディングならざるロックを映画音楽とする映画群。本当は個々の映画をきちんと評価すればいいのですが、学生に向けてある時代のあるジャンルの映画がアメリカのその時代の社会と文化と呼応している、その関係性について説明したいので。

 その前の50年代の繁栄と閉鎖性、そのあとの70年代のベトナム戦争後の内向世代的な時代についても。そう言えば1990年代にミニマリズムというアメリカ小説がはやりましたが、書き手は80年前後に書いて、翻訳がその少し後の80年代後半から90年代にかけて出始めたのでしょうね。この家族や友人・恋人の話が中心となる小説は、混乱が終わった後も少し社会とは距離を置きたいという傾向の文学的表現だと考えられます。

 いずれにしても大枠としては20世紀後半のアメリカ映画とアメリカ社会について説明できればと考えて、これから早朝テニスです。