中野翠の『小津ごのみ』を読む

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  中野さんんについては以前から林真理子がらみでと、週刊『文春』の映画欄(シネマチャート)で注目していました。

 実は今回も坪内祐三絡みで。かれのエッセイスト仲間。年は思っていたよりも上で1946年まれです。僕は坪内さんと中野さんの中間。それで彼女の文庫も少し読んでみました。早稲田在学中は社研(社会科学研究会と言ってあちこちの大学に、たぶん西高にもあったような)にいて、同じ部室に文学研究会のメンバーである評論家の呉智英がいたらしい。その頃の事が『あのころ、早稲田で』(2017年文春、2020文庫)で読めます。

 それとあの橋本治との対談『二人の平成』(ちくま文庫)を出している。これはkindleで読みましたけれど、いまいちだった。二人の波長は合っているのだけれど、読者が置いてけぼりにされてしまう。でもあの橋本治が彼女のエッセイを読んでいて評価しているというのがすごい。実はけっこう読んでいた内田樹橋本治と対談していてこれは、橋本の方が内田に関心がないのかこれも不発でした。

 そして『小津ごのみ』、面白い。いい意味で女性の視点が生かされています。服装やインテリアの好みがクラシカルでモダン。言葉つかいやモラルが江戸と地続きだった東京。庶民のリアリズムではなく、中産階級の家庭劇で表現される人生と時間の豊かさと虚しさが、具体的に指摘されて、とても面白いです。

 それとイラストが中野さん本人で、着物の柄だけでなく、障子やふすまのデザインが屋内の雰囲気を決め、それがいわゆるリアルではないけれど、小津監督のこのみ≒意図を表現しています。アーノルド・ウェスカーというイギリスの劇作家が小津映画をモンドリアンだと言っているそうです。そうか、あの格子模様のデザインのシンプルな抽象的な明るさが、何か寂しさと虚無とつながるようにも思えます。

 関連して『小津安二郎 生きる哀しみ』(PHP新書)を買ったら、著者は札幌の女子短大の先生でした。でも僕と同い年だからもう定年かな。