『若草物語』が映画化され続ける理由

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 女優で監督のグレタ・ガーウィックの『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』(Little Women 、2019)が週刊誌(『文春』)の辛口の映画評論家にも絶賛されています。だけど日本の映画配給会社の題名のセンスってずっと変わらない。説明的な長いタイトルで映画ファンを困らせています。カリフォルニア生まれのドイツ系のガーウィックは2017年に『レディ・バード』を監督。批評家から絶賛され、アカデミー監督賞と脚本賞にノミネートされました。

 さて『若草物語』は映画モノクロ時代のの1917年イギリスのアレクサンダー・バトラー監督から1918年アメリカのハーリー・ノールズ監督に始まり、1933年にはジョージ・キューカー監督のキャサリン・ヘップバーン出演バージョンから有名です。キューカー監督は『スター誕生』(1954)や『マイ・フェア・レディ』(1964)などの有名監督で、キャサリン・ヘップバーンは当然ながら次女の作家志望のジョーを演じました。1949年のマーヴィン・ルロイ監督版では、長女メグがジャネット・リー、ジョーはジューン・アリソン、ベスがマーガレット・オブライエン、そして4女エイミー役のエリザベス・テーラーが注目を浴びた。

 そして3人の女性監督が続きます。これは4人姉妹の性格付け、キャラクターの違いが女性の個性や社会における役割などを描き分けるのに、女性監督の表現意欲をかき立てる様にも思えます。1994年のジリアン・アームストロング監督版ではウィノナ・ライダーが次女ジョー。2018年のクレア・ニーダープルーム監版に続いて、2019年監督のグレタ・ガーウィックの『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』が登場し、ジョー役のシアーシャ・ローナンが注目されます。ガーウィック監督の前作『レディ・バード』で主演し注目されたアイルランド系の若手女優。

 原作のLittle Womenの方は1868年にルイーザ・メイ・オルコットが書いた自伝的小説です。父親はエマソンやソローとも交流のあった超越主義者。超絶主義ともいわれますが、宗教的なロマン主義。自我の尊重と個人の感性の解放、自然の中で神秘的な神との交流を求めるような考え方です。Little Womenというタイトルに現代の女性ならむっとくるかも知れませんが、Womenと言う風に自立する女性として尊重しつつ、父親の娘への愛情がLittleに表現されています。つまり男性としてではなく年上の家族からの愛称ですね。