ハリウッドの男性優位

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  僕が生まれた年に作られた『真昼の決闘』を見たのは10代後半か20代だろうか。この名作西部劇を見た最初の印象はゲーリー・クーパーが老けていて、花嫁のグレース・ケリーが娘に見えました。この時ゲーリー・クーパーが51才、グレース・ケリーは23才で28才違い。このような年の差カップルは特別なケースだろうと思っていたら、ヒッチコック監督の2作品で『裏窓』(1954),『泥棒成金』(1955)でもグレース・ケリーがおじさんの相手役に。実はヒッチコックグレース・ケリーが気に入っていて実際に言い寄ったようです。

 『裏窓』では46才のジェームズ・スチュアートとはそんなに違和感はおぼえなかった。でも『泥棒成金』のケーリー・グラントは51才で26才のグレース・ケリーとはやはり年の差が目立つ。ケーリー・グラントは格好いいでのすけれど。中学の頃から『映画の友』をよく眺めていて、そこに出てくる写真のハリウッド俳優は昔ハンサムだったんだろうけれど、中学生にとってはおじさんだった。20代の女優はきれいなお姉さんで、どうしておじさんとカップル何だろうと言うのは後から作り上げた疑問だったのだろうか。

 『映画の友』は高校の時に廃刊になったのかな。その後『キネマ旬報』を仕事を辞めるまで50年近く講読していました。で『映画の友』が少し遅れて出てきた『スクリーン』よりもほんの少しだけハイブロウ?で、高校生の兄が買った時もあったかも知れないけれど、貸本屋で借りて読んだ記憶が。貸本屋文化があったんですね。茶色いクラフト紙に包まれた雑誌。近所に2軒あった貸本屋の場所や佇まいを何となくよりももう少し鮮明に覚えています。

 今度はハンフリー・ボガートの例。『三つ数えろ』(1946)ではハンフリー・ボガート47才、ローレン・バコール22才。ボガートは脇役で有名になってからの主役への昇格なので少し年をくっていても仕方がない。しかもこの映画がきっかけで25才下のローレン・バコールと4回目の結婚をしました。そのボカーㇳ55才の時に26才のオードリー・ヘップバーンと共演したのが『麗しのサブリナ』(1954)。

 どうもこの年の差は、映画製作者・監督の多くが中年男性で、彼らの願望からきているというのが僕の仮説です。これがもう少し危なくなると『ゴッドファーザー』でもちょっと描かれていたキャスティング・カウチ。ゴッドファーザーマーロン・ブランド)の名付け子である歌手の出演を邪魔する大物製作者を脅すために彼が所有するサラブレッドの頭部をベッドで見つけさせる場面の前の方で、若い女優というよりも子役の様に見える少女がステージ・ママに付き添われて製作者に面会する控えの間のカウチがまさにそうでした。

 そんな危うい文化がずっと続いてきて、それがまた噴出したのがワインスタイン効果というユダヤ系の映画製作者の事件。この人、僕と生年月日が10日違い。お父さんが東欧から移民してきたダイヤモンド加工業者。本当に絵にかいたようなアメリカのユダヤ系移民の家系です。マンハッタンにはユダヤ教の伝統的な服装をしたダイヤモンド商人が47丁目/5・6番街にたくさんいて、ダイヤモンド・ディストリクㇳを形成しています。

 さて写真は伝記のカバーなのでもちろん若くてきれいな時のゲーリー・クーパー。中年でも格好よかったけれど、『真昼の決闘』では老けて見えました。役どころも街の人から見放されて孤立した保安官でしたし。それも一人でも毅然として戦っているというよりは、一人で戦わざるを得ない感じで。