天陽くんとポップ・アート

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  昨年のNHKの朝のテレビ『なつぞら』で主人公のなつの幼馴染(初恋?)だった天陽君は今どき多いちゃらくてきれいな俳優ではなくて好感が持てた。この天陽くんのモデルが神田日勝(1937~70)でした。いま東京ステーション・ギャラリー(丸の内)で展覧会を開催しているので朝日新聞の朝刊に紹介されていました。

 新聞では3点紹介されていて、一つは遺作・未完の「馬」(1970)。これはドラマでも出ていましたが、やはりドラマで出て来る絵は良くないんですね。本物は新聞でも、ネット上の画像でも悪くない。次は1960年の「飯場の風景」(1963)、東京オリンピックの前の年のリアルなような、素朴なような、でも暗いタッチだけれど画面の構成は新しいような、前に紹介したアメリカの1930年代のアッシュカン・リアリズムに共通するような高度成長で浮かれる社会の下積みの人たちを描いています。

 興味深いのは写真で紹介する1968年の「室内風景」。これがポップなんですね。色といい、画面構成といい、描かれている日常的なものが面白い。テレビ、画材、人物、そして背景に布団が敷かれていてちゃぶ台もあります。新聞では膝を抱えて座る人物を孤独とか閉塞感とか評していますが、もう少しあっけらかんとした、ポップ?な表情にも見えます。

 短期間でいろんな画風を試みたのか、新聞でも書かれていたように同時代の美術界の動向に反応したのかは分かりませんが、描かれている絵は現在の僕らにも十分すてきに見えます。