ポストモダンなローランド・カーク

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  またローランド・カークですが、ブログを書き続けるために書くのではなく(そういう時もありますが)これは聞くと面白くて書きたくなります。アルバムはVolunteered Slavery、これはジャズの枠を超えたブラック・ミュージックのメルティング・ポットと考えてもいいかなと思います。もっと言えばポピュラー・ミュージックの坩堝。

 冒頭のタイトル曲Volunteered Slaveryではボーカルとも叫びとも言える声も入って、しかもHey Judeも引用されるのですが、突然でも違和感がない不思議さ。

 I Say a Little Prayerバカラックの名曲でディオンヌ・ワーウィックの歌唱はもちろん、アレサ・フランクリンでも有名です。バカラックの曲ってワーウィックのクールでミニマルな歌い方に合っています。一方ではソウルっぽい、黒っぽいアレサの歌唱もいい。で、ここではとつぜんコルトレーンの引用。Love Supremeの Resolutionが出て来ます。I Say a Little Prayerは「小さな願い」と訳されますが、「祈り」という言葉からスピリチュアルな連想が働いたとも言えます。それも賢しらな解釈で、別に何となくこのメロディーが出てきたのかも。

 その後にはコルトレーンへの敬意としてAfro Blueも演奏され、フルートやマンゼロやホイッスルや声まで音のでる装置の総動員。ジャンルを超えて、メディア(道具)の制約も超えて、それが時空を超えて51年後のコロナに怯える?日本の札幌まで届きました。ポストモダンと幾度となく呟いていますが、いい意味でハチャメチャな、つまらない統一や制約を無視する、混合と融合と越境と横断と破壊と創造がいっぺんに実現する場が1968年のニューポート(ジャズ・フェスティヴァル)と1969年のニューヨークとであったんだとなぁと思います。時々はやり過ぎかなとも思える瞬間もありながら、全体としてはなんか面白くて、すごい音楽を聞きました。