歩く

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  時代小説を読んでいると、登場人物はよく歩きます。そう、自動車も列車も飛行機もない時代。江戸の庶民が経済力持つようになって旅を楽しむようになり、特に伊勢神宮を参拝するお伊勢参りが有名です。そしてこの時代の旅行はほほ徒歩だった。お殿様とかお姫様は立派な駕籠に、緊急の時に武士は馬に乗りますが。

 『歩く江戸の旅人たち――スポーツ史から見た「お伊勢参り」』(谷釜尋徳、晃洋書房)が昨日の読書欄で紹介されていました。今までも武道家甲野善紀さんの本や画像で昔の日本人の歩き方(なんば歩き)の姿勢や速度など教えてもらいました。また幕末の志士たちも九州から京都や江戸までも何回も往復しています。志士は下級武士が多いので、駕籠や馬よりもきっと歩いたんでしょうね。京や江戸までの旅の途中の藩で攘夷や尊王、最後には討幕の志を共にする志士たちと議論をしたりしながら。

  で普通の旅人が1日どのくらいかというと、平均34キロ、10時間だそうです。僕は1キロ10分で歩くので1時間で6キロ、10時間だと60キロになりますが、当然時間と距離が長ければ疲れるので、最初の1時間目と最後の10時間目ではかなり違うでしょうから割り引いて6割程度にすると36キロくらいで計算が合います。もちろん10時間も歩けないけれど。別な資料を見ても30~40キロとなっていました。飛脚の場合はどうか。江戸と大阪の間500キロを5~10日で走ったそうです。1日50~100キロですが、これはマラソン・ランナー級の健脚の飛脚が駅伝のように宿ごとにリレーをしながら走ったのだと思います。費用は今でいえば、数千円から数十万。

 歩くギアはふだんの草履や下駄ではなく足首も固定した草鞋。履いたことがありますが、旅行用のスポーツ・ギアでした。でもソウル(底)は厚くないので地面が土だとしてもけっこう痛そう。それと棒、時には杖。これも最近のウォーキングには重要視されていますね。僕もランニングやジョギングはこれからもしないだろうけれど、歩くのは嫌いではないです。好きとまでも言えない。でも足元の雑草、空の木々の風景を見て自然の匂いを感じながら歩く事ができます。ついでに買い物もできる。お腹が空いて身体にもいい。夫婦の会話も増えます。そうだ、お金もかからないし、いい事だらけだね。

 絵の左から3番目の女性の、風呂敷に荷物を包んで背中にしょって前の方に斜めに結ぶ形は今のボディ・バッグのようにも見えますね。