サイケデリック・ジャズ(のような)

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  ドラッグによるトリップのイメージを音楽化したと言われるサイケデリック・ロック。西海岸のドアーズやグレートフル・デッド、ジェファーソン・エアプレーン。でもほとんどドラッグをやっていた1960~70年代のアメリカのロック・ミュージシャンの音楽はかなりドラッグの影響を受けていた中でのサイケデリック・ロックってそんなにサイケではないような。

  それまでのキリスト教をふくむ欧米の伝統的な価値観への反抗から仏教や禅そしてハレクリシュナのようなヒンドゥー教までにも影響を受けたヒッピーの若者たち。そんなアメリカのインスタントな悟りへの道の一つとしてドラッグ=異世界への旅があった。イギリスから移住してきた作家オルダス・ハックスリーがメスカリンをはじめとするドラッグを試してみた記録『知覚の扉』(1954)がのちにハーヴァードの助教授でドラッグの導師(グルー)ティモシー・リアリーに影響を与えた。もちろんザ・ドアーズのバンド名もここからきている。そしてハックスリー自身の末期の病床で治療のためかトリップのためかLSDを投与されて1963年11月に亡くなった。治療のための薬物に依存しするケースはけっこうあるらしくて、大学の英文科時代に知ったド・クィンシ―の『阿片吸引者の告白』で貴族みたいな名前の作家のすごい本だと思いました。

  ハックスリーのドラッグへの関心は、身近な死(肉親の病死、自殺など)や本人の目の不調などから神秘主義や宗教、そして薬物による意識の拡大につながっていった比較的真面目な?哲学的・思想的なものですが、アメリカでは繰り返しますがどこかお手軽なプラグマティックなmind blowingへとなっていったような気がします。

 でもアメリカって成立自体がアングロ・サクソン系が中心とはいえ多民族植民地が独立した常にnation on progressな成長していくつまり変わっていく、完成に向けて発展していく途上の、ある種の実験国家な訳で、国民も若く、時に愚かな実験を繰り返していくので、例えば1960年代の意識の拡張というと、悟りに向けて地味に修業するよりも、ドラッグで到達できるならそれでいいじゃんとなるように思えます。

   ここではロック・ファンにも人気があったと言われるチャールズ・ロイドのサイケデリック・ジャズについて書こうと思いながらついサイケについて考えてしまった。

 数日前にチャールズ・ロイドのアルバムをピアニストの変遷に沿って聞きましたが、Discovery(1964) , Off Course, Off Course(1965)、Dream Weaver(1966)、Forest Flower(1966), , Love in(1967), Journey within(1967)とタイトルを並べると、「発見」や「夢」や「旅」など確かにサイケデリックっぽいです。演奏もキースのピアノ、ガボール・ザボのギターもふくめて少し行った?かなと感じられるようなトランス状態の演奏も一部あって面白い。

 写真はタイトルとジャケットがいいので。