黒人アーティスト、エトランゼ

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 相変わらずクラーク=ボラーン・ビッグバンドを聞いています。最初15~18枚くらいかなと思っていたアルバムが23~25枚あると知って、もともと3枚しか持っていなかったのがアマゾンで10枚ほど買ってしまいました。理由の一つに新型コロナで外出を自粛しているので、外食・飲み代がかからない分を文化的な?活動に使おうかと。

 1963年のHandle with Care、1965年のNow Hear Our Meanin'、1966年のSwing, Waltz, Swing、1969年のAll Smiles、More Smiles、Latin Kaleidoscope、Faces、Fellini 712、1971年のOff Limits、Cahnges of Scenes with Stan Getzです。

 今のところAll BluesとSax No End、All Smilesが気に入っています。All BluesとSax No EndとMore Smilesのジャケットが女性のヌードでま、下品ではないけれど、CDをテーブルの上に置いておいて家族が見ると少し・・・Sax No EndはSex No Endだと思ったのは若い日の健康的な勘違いかな。

   それにしても10年ほどの活動期間で20枚以上のレコーディングをしたのは、実力プラス人気も相当あったのでは。

 1914年生まれ ケニー・クラークが40代後半、1929年生まれのフランシー・ボラーンは30代。バンドをぐいぐいと引っ張ってる1926年生まれのベースのジミー・ウッドは5年ほどエリントンのバンドにいました。1928年生まれのジョニー・グリフィンのエネルギッシュなテナーもいいです。グリフィンはライォネル・ハンプトン楽団~ジャズ・メッセンジャーズその他を経てヨーロッパに渡ります。

 最初にヨーロッパに渡ってそのまま滞在して亡くなったエリック・ドルフィーの事を知ったのは20代の学生の頃でしょうか。自分の手作りの詩集にWhen you hear musicm

after it's gone, you can never capture it againという句が好きで引用しました。演奏のジャズの一回性についてなんとくなく理解したような。Last DateのYou Don't Know What Love Isはジャズのフルート演奏の極致だと思っていました。ジャズに詳しい幼馴染のND君(Ryuちゃん)からもらったEric Dolphy in Europe vol1に入っているHi Flyのフルートもかなりいいです。ローランド・カークやジェレミー・スタイグのように息を音を立てて吹き込む様な、クラシックのきちんとした奏法に抗議するようなフルートもいいですが、アヴァンギャルドでもあるドルフィーの意外と端正なフルートに参りました。

 タイトルは1960年代のアメリカの黒人ミュージシャンの渡欧≒滞在≒移住について知った前後にアメリカ文学の勉強をしていて、黒人作家の似た様な現象について気になっていたので。最近も再映画化された『アメリカの息子』のリチャード・ライトは戦後すぐにパリに渡り、1960年32才でフランスで亡くなっています。ジェームズ・ボールドウィンは1948年に23才でパリに渡り、12年ほどいましたが、1960年代は公民権運動の時代にアメリカに戻りますが、最後はフランスでなくなっています。ミステリー作家のチェスター・ハイムズは1957年に40代後半に移住し、74才で亡くなっています。

 やはり黒人アーティストはヨーロッパの方がないとは決して言えませんが人種差別は少なく、芸術家が尊敬される文化があったと。

  写真は真ん中がケニー・クラーク、左下がジミー・ウッド、さらにその左がフランシー・ボラーンだと思います。

 ヨーロッパに移住したアメリカの黒人アーティストは、まさに越境したエトランゼでした。彼らは故郷(と言えるか)アメリカの事をどう思っていたのでしょうか。郷愁などはなかったのか気になります。